大 気 汚 染 問 題

 
 

武田薬品の新研究所(以下新研究所あるいは本研究所と略記)から外部に強制排気されるガスは、大別して、@化学実験、Aバイオ実験、BRI実験およびC動物実験(飼育・焼却を含む)で使用され汚染されたガスである。そのガスには、毒性化学物質、フィルターを通過する病原菌やウィルス、動物死体焼却による煤(すす)・ダイオキシン・浮遊粒子状物質悪臭の素などが含まれる。
新研究所から排出されるガスの危険性は、単に毒性化学物質の一部や遺伝子操作による正体不明の微生物・ウィルス、それに実験動物の飼育・実験・焼却の結果生じる有害排出物などが含まれていることにのみにあるのではなく、世界最大級の、その途方もなく巨大な排出量に存在する。
住民は、常時放出されるこのような汚染ガスを長期間にわたって吸い続けることによって、近い将来、(乳幼児や老人を含めて)自分たちの命・健康に重大な障害が生ずることを予感し、不安と恐怖に慄いているのである。現に、2002年、高槻市・JT(日本たばこ産業)のP3バイオ施設に関する住民訴訟において、大阪高等裁判所は「当該事業活動により人の生命、身体又は健康を害する現実的可能性がある」と認めている。
研究所から排出される汚染ガスの総量は、動物死体の焼却による排出分を含めて1時間当り約800 万m3(東京ドーム6杯分)、国立感染症研究所のほぼ200倍の量になる。1日に(24時間稼動と仮定して)1億8000万 m3(東京ドーム150杯分)となり、これは、研究所敷地の上に約760 mの排気ガス塔を毎日積み重ねることに相当する。この排気ガスを半径3 km以内の面積に積み上げると、6 m以上の高さの空気層になる。


総量の問題−巨大な排気塔

Q近隣住民は日々、新鮮な空気を吸うことが出来ない状態に置かれる。これで問題ないと断言する根拠を示して頂きたい。

Q 武田側は「アセスメント評価書案」とその説明会で「排出されたガスは拡散・希釈されるので問題ない」と強調したが、これだけ大量の汚染ガスが常時(周囲を建物に囲まれている)この地域に放出され続けると、近隣地域では時間的にも空間的にも拡散・希釈される余裕がない。今回のアセスメントでは、拡散の時間依存特性を計算した形跡がない。如何にして「問題ない」と主張するのか? その根拠を示して頂きたい。

Q 排出ガスには動物死体焼却によるダイオキシンや浮遊微粒子さらにバイオ施設からの微生物やウィルスが大量に含まれている。住民がこの双方から出る汚染ガスを長期間吸い続けることにより、これらが体内に蓄積され、いずれ生命・健康上の被害を受けるものと考えられる。このような長期間の健康被害を医学的に研究・調査・評価は行ったのか? 特に、乳幼児・病人・老人への影響の定量的評価結果を示して頂きたい。(参考:アメリカの医療研究機関が、北京オリンピック期間中に一般外国人が北京市内の普通の空気を吸うことにより呼吸器系に加えて循環器系に障害が発生する、と警告している。)

Q住民の生命・健康・安全を守るため、毒性化学物質、病原菌・ウィルス・動物由来の浮遊粒子状物質などの総量規制が必要である。県及び関係市は実行して頂きたい。また、武田側はこれら汚染物質の(年間当り)総排出量を示して頂きたい。


気象への影響

Q 研究所近辺は、北側に住宅街と背後の丘陵地帯、東側一帯に高さ50 m 前後のマンション・病院等の建物が、屏風のようにひしめいている。このため、既にビル風の強い地域となっている。新研究所の建設はこのビル風を増強することになる。アセスメントではそのような検討をした形跡がない。専門家に依頼して真剣に検討すべきであると考えるが如何? また、住民の迷惑をどのように受け止めているのか?

Q 動物死体の焼却炉からダイオキシンの発生を防ぐため、燃焼温度800℃から200℃まで急冷するとのことであるが、どの程度の短時間にどのようなメカニズムで急冷するのか? 短時間といえども、冷却時間はゼロではないので、その間にダイオキシンは発生する。どのくらいの量のダイオキシン発生を見込んでいるのか? ダイオキシンは微量でも人間に有害であるので、定常運用時に焼却炉排出物をモニタすることが必須である。どのような方法でモニタするのか? 

Q10 一日約2,000 m3の上水が空中に放出・消費されるので、これは約200万m3のガス(水蒸気)となる。このため排出される汚染ガスの湿度は周囲の空気よりもかなり高くなる。従って局地的な気候変動、例えば局地的豪雨、を引き起こす可能性が高い。この現象について、今回のアセスメントでは検討していない。気象研究所や環境省などに依頼して、この現象の定量的評価を行うべきだが、どのように対処するつもりか? また、近未来の被害を最小限に抑えるためにも、常時、周辺地域の気象観測を実施すべきではないか?


数値シミュレーションの問題

Q11 アセス評価書案の数値計算によれば、排気ガスによる大気汚染は基準値以下であるので問題ない、とのこと。今回のアセスメントでは、近隣の三次元地形・建物モデルを構築して計算した形跡がない。それで、なぜ「問題ない」と言えるのか? また、流体運動や拡散を記述する基礎方程式、計算Code、前提条件、境界条件(例えば、一日何時間排出する条件なのか?)、汚染物質・微粒子・エアロゾルの扱い、乱流モデル、風データの詳細、誤差解析の有無などが不明である。数値シュミレーションは、内容とデータとプロセスを明示しない限り、その結果に対する信用性はゼロである。

Q12 細菌類、病原体、ウィルス、エアロゾル、動物死体からの浮遊微粒子などはそれぞれ異なる質量と大きさに応じて長期間空中に浮遊して遠くまで飛んで行く。これらの飛行状況や飛散・拡散範囲は風向・風速により異なり、また、近隣の地形・建物の配置・高さ等により、複雑に変化する。エアロゾルや微粒子などは、気象条件によっては、マンション群や病院を直撃する。アセス評価書案にはこのような計算をきちんとした形跡がない。この計算は、黄砂飛来の計算技術に匹敵すると考えられるが、この面の研究を続けている気象研究所等にシミュレーションや評価を依頼すべきである。そのような評価も受けないまま、また、計算条件等も示さないまま「問題ない」と言われても信用できない。上記専門の研究機関の指導を受けて計算し、再度提示して頂きたい。

Q13 (モニタリング)数値シミュレーションは実証されない限り、単なる数字の遊びである。従って、近隣地域の広い範囲にわたって、大気汚染の観測を長期的に行うべきである。モニタリングの結果は、公表するとともに気象研究所や環境研究所等に評価して貰うのが常道であると考えられるが如何?

Q14 (風データの選択)今回のアセスメントでは、研究所近隣の風データの扱い方(Input)が恣意的であり、杜撰である。アセスメント評価書案の計算では、風の高度分布を完全に無視し、地上6 m一点のみとし、また、風速は1〜3 m/sの微風のみで強風は計算にいれていない。気象庁のデータによれば、当地・湘南地方では、年間平均で、南西〜南南西の風向が最も強い。排気ガスはこの風に乗って鎌倉側のマンション・病院・老人ホームなどに直接吹き付けることになる。従って、広い範囲にわたる風の三次元データ(風速・風向とその高度分布)を用いて計算しない限り、「最悪条件でも問題ない」とは言えない。少なくとも、無風から「春一番」(風速20 m/s 前後)の風までは計算に入れるべきである。


希釈の問題

Q15 既述のとおり、武田側は汚染物質を外に出しても、それは外気(空気)によって拡散・希釈されるので問題ない、と主張するが、この“希釈”は地球環境汚染の元凶である。地球の空気も水も全てが有限であり、無限ではない。その意味で、空気は地球の資源である。この点、武田の新研究所構想は、資源の無駄使いであり、地球温暖化・環境破壊の元凶となる。この点につき、武田の見解を求める。


バイオ施設内空気の問題

Q16 武田側は、バイオ施設内の従業員の健康を守るため、その施設で一回使用した空気は再循環せずに外部に排出する、と説明している。つまり、バイオ施設で一回使用した空気には細菌類やウィルスなどの微生物が多量に含まれているので人体に危険だから外部に強制排気する、と武田側は認識していることになる。しからば、新研究所勤務の壮健な業員の健康にとって危険な汚染ガスを外の住民(特に乳幼児)が長期間吸い続けても問題ないと言い切る根拠は何か? もし、乳幼児に問題ないガスであるなら、研究所内で再循環すべきではないか?(近隣地域では、実質希釈されないのだから。)

Q17 (30年前の技術)7月21日の地域限定の説明会において、武田側の招待講演者である小松俊彦先生は、この30年間で技術は格段に進歩したので(立地規制など)WHO国際基準に従う必要はない、と説明された。同じ理由を用いれば、30年前と同じようにバイオ施設内の空調空気を一回限りで強制排気する必要は全くない。30年前と比べて格段に進歩した現在の技術を用いて、全ての空調空気を再浄化・再循環し、完全に内部で完結する「自己完結型システム」にして頂きたい。そうでなければ、住民の不安は消えない。